実験をご紹介します。4歳の園児に「目の前のマシュマロを1個、すぐもらう」か、「20分間待って2個もらう」かを選ばせる、というのが実験の内容です。
結果はどうだったかと言えば、我慢できず1個だけもらった子が3分の2、残りの3分の1が我慢して2個もらった、というものでした。実験したスタンフォード大学の教授は、園児たちのその後を追跡しています。
欲求に打ち勝った自制心の強いグループは、欲求に負けたグループより、大学進学適正試験の点数が高く、中年時の肥満指数が低く、そしてストレスにうまく対処する能力が高い、といった共通点があったといいます。
自制心、つまり欲を制する事は、人生の成功に極めて大きな影響を与えます。とりわけ将来成功者になり社会に貢献したい、と心のどこかで思っている皆さんにとって、この自制心を働かせて未来を創りあげていく事は重要な要素です。園児のうち3分の1はマシュマロにむしゃぶりつかないで20分間耐え切るわけですが、そこには彼らなりの戦略がありました。
彼らが考えた自制のための最大戦略。それは「マシュマロを見ない」「マシュマロを遠ざける」というものです。
誘惑に負けたグループは、そうした対策を取らず、実験開始直後からマシュマロを凝視したり、触って感触を堪能したり、匂いをかいだりしました。そうした子はほどなく陥落し、目の前の1個にむしゃぶりつきました。
一方でマシュマロを2個もらえたグループの子達は、マシュマロから視線を離したり、テーブルの端っこにわざと押しやったりしました。誰に教わったわけでもないのに、欲望の対象に視線を向けない事が自制心を保つのに役立つと理解していました。
自制する方法として、そんなことは当たり前の行為だと思うかもしれません。しかし、われわれが生活しているのは実験室ではありません。実験室には、マシュマロしか置いてありませんが、実際の社会生活にはもっと多くの思考を占領する雑多な情報が、あちらこちらにあります。そのような環境の中で、自制することは思いの他難しいはずです。
皆さんには、彼ら園児達のとった、偉大な戦略をどうか役立てほしいのです。冬期講習という空間は、実験室以上に前向きで、禁欲的な空間です。欲望を抑制するために必要な環境を全て揃えています。
ぜひ冬期講習を通じて、将来の立派な教養人、戦略保持人になってくれることを、願っています。